綱領・行動綱領

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はじめに

カネボウ企業グループにおける労働組合運動は、戦後の民主化の流れのなかで、各工場・事業場ごとに結成された労働組合と、それを統一して発足した「鐘紡従業員組合同志会」に始まります。その後連合組織を経て、1953年(昭和28年)単一組織の「鐘紡労働組合」に改め、組織の整備・強化に取り組みました。その一環として運動の理念、活動の方向を統一化することを目的に、1961年(昭和36年)に「行動綱領」を制定しました。

昭和30年代半ばから、企業の多角化などにより企業グループ内にいくつかの労働組合が存在することとなり、相互の連携を深めるため協議会組織をつくり、1979年(昭和54年)には連合組織に発展させ「全鐘紡労働組合連合会(鐘紡労連)」を結成し、1981年(昭和56年)に「綱領」「行動綱領」を制定しました。その後、1994年(平成6年)には単一組織の「カネボウ労働組合連合会」に改組しました。

カネボウ労働組合連合会は、企業グループの厳しい経営環境、さらには広域・多業種にわたる組合員から構成された単一組織としての運営、組合員の意識の変化による組合活動に対する多様化したニーズなど、組合を取りまく環境の現状認識と中期的な展望を踏まえ、活動の方向を明確にするため「綱領」「行動綱領」を改定することとしました。

「綱領」は私たちが活動するにあたっての基本理念を示すものであり、「全鐘紡労働組合連合会(鐘紡労連)」の「綱領」の思想や構成が大きく変わることはありません。

「行動綱領」は、基本理念である「綱領」を具体的に実践するための行動の在り方、方向を示すものです。今日的状況を踏まえ、中期的方針としてここに改定します。

カネボウ労働組合連合会の活動方針は、この「行動綱領」に示された方向のもとに策定され、その活動を推進します。

2001年9月21日
カネボウ労働組合連合会 第23回定期大会

カネボウ労働組合の組織改編について

カネボウ労働組合は、2021年9月開催の第43回定期大会において、2022年9月に連合会組織へ移行することを決定しましたが、2022年4月、組織問題に直結する会社提案「㈱カネボウ化粧品雇用組合員の人員措置に関する件」を受け、組織を挙げて最優先に取り組む必要があるとの判断から、組織改編の実施期を1年延期し、2023年9月に変更することとしました。

組織改編を決定して以降2年にわたり、本部役員・支部長からなる「結成準備委員会」において検討のうえ、本年6月からは組織内討議を行いつつ、“連合会組織の基本構想”を取りまとめました。その内容は、『特別報告「組織改編」への取り組みについて』の通りです。

以上の経緯を踏まえ、ここに、単一組織カネボウ労働組合は、カネボウ労働組合連合会に組織改編し、新たに結成されるクラシエ労働組合、花王ビューティブランズカウンセリング労働組合、花王コスメプロダクツ小田原労働組合を加盟連合として組織します。

なお、組織変更に伴い、カネボウ労働組合の資産、負債および権利義務の一切をカネボウ労働組合連合会が引き継ぐものとします。

2023年9月25日
カネボウ労働組合連合会

綱領

  • 私たちは、健全強固な自主的組織を確立し、雇用の安定と労働条件の維持改善につとめ、働くものの経済的、社会的地位の向上を期します。
  • 私たちは、技術の練磨、品性の陶冶、識見の啓発につとめ、人格の向上と完成を期します。
  • 私たちは、労使対等の立場を堅持し、相互の理解と信頼を基盤に、民主的労使関係の確立を期します。
  • 私たちは、労働の社会的意義を認識し、企業、産業ならびに経済全体に対する参加と提言を行い、その発展を期します。
  • 私たちは、自由と人権が保障される公正な社会の実現につとめ、世界平和に貢献することを期します。

行動綱領

基本的立場

  1. 私たちの基本目標
    1. 労働組合の目的は、組合員の生活の安定と向上をはかることです。そのために雇用の安定と労働条件の維持・改善を基本任務とし、たゆまざる努力を続けるとともに、経済的および精神的ゆとり・豊かさを実現するよう努めます。
    2. 私たちは、自由と人権が保障される開かれた公正な社会、生活者を優先する社会、友愛や連帯の精神が生かされる社会の実現へ向けて、国内外における労働組合の社会的役割を果たします。
  2. 私たちの基本姿勢
    1. カネボウ労働組合連合会は、すべての組合員が自主的に活動に参加し、その権利を行使し、義務を果たす民主的な組織運営を行います。活動にあたっては革新と創造の精神を尊重し、活動を通して人間的成長をはかります。
      また、同じ考えに基づき活動する国内外の諸団体との連携を密にし、企業内の組合活動にとどまることなく幅広い活動を展開します。
    2. 私たちは、労使対等の原則に立ち、相互の立場を理解、尊重した労使関係を基本に、事業業績の向上に協力し、その公正な成果配分を求めて協議します。そして企業の健全な発展が組合員の生活の安定と向上に不可欠であるという考えに立ち、労使協議体制の充実をはかり、経営への発言力を強めます。

組織方針

  1. カネボウ労働組合連合会の組織のあり方
    1. カネボウ労働組合連合会はカネボウ企業グループ内ならびに日本エヌエスシ-(株)・アイオン(株)に働く者が結集して組織した労働組合です。そこで働く者の意志を統一し、より強固な組織とするため、会社とユニオンショップ協定を結んでいます。
      また、共に働く仲間と活動を展開するためにカネボウ企業グループ内の未組織企業の組織化や、有期雇用従業員の組合員化に取り組みます。
    2. カネボウ労働組合連合会は、組合員のために組合員の手により組織し、すべての活動は、組合員の意志によって始められ、その成果は組合員にもたらされます。
    3. カネボウ労働組合連合会は、活動をさらに広げるためゼンセン同盟に加盟し、ゼンセン同盟を通じ、ナショナルセンターである日本労働組合総連合会(連合)に加盟しています。ゼンセン同盟、連合の活動を通じ、国内外の友誼団体との連帯を深め、労働者の経済的、社会的地位の向上に努めます。
  2. カネボウ労働組合連合会の組織の運営
    1. カネボウ労働組合連合会は事業遂行にあたって、組合員の意志を尊重し、その意見を反映することのできる民主的な運営を行います。そのためには組合員一人ひとりが、規約・諸規定に定められる権利と義務に基づき行動し、諸活動に参加することが大切です。
    2. 活発な活動を展開するために、組合員がその理念や目的を十分理解できるよう努めるとともに、活動を推進するリーダーを育成していきます。
    3. 活力ある組織とするためには、組合員一人ひとりの声が反映されることが大切です。組織の運営にあたっては、一方的な伝達ではなく、相互に意思疎通をはかるため「知る活動」「知らせる活動」を積極的に展開します。
    4. 主要な労働条件の闘争にあたっては、上部団体の方針に基づき、組合員全員の意思統一をはかり、組織力を発揮するために、闘う体制を確立します。
  3. カネボウ労働組合連合会の財政
    1. 組合財政は組合活動を展開する上での源泉となるものです。カネボウ労働組合連合会は財政基盤の確立に努め、健全な運用を行います。
    2. 組合財政の財源は組合員一人ひとりが拠出する組合費であり、それにより活動を展開します。
    3. 組合財政の運用にあたっては十分な組織討議を経て決定します。また、それを効果的・効率的に運用し、組織運営を行います
    4. カネボウ労働組合連合会は一般活動費のほかに、争議行為のための罷業資金を積み立てます。これにより組合員の生活を保障し、団結して闘うことができる体制を確立します。
    5. 共済制度や保護制度などの自主福祉を展開するために、その資金の充実に努めます。

労使協議体制

  1. 労働協議会と労使委員会
    1. 私たちは、憲法で保障された働く者の権利の一つである団体交渉権を行使する場、会社側と交渉する場として労働協議会を設置し、組合員の労働条件などについて誠意をもって交渉します。
    2. 私たちの生活の安定と向上をはかるためには、会社の安定した経営基盤と発展、そしてそこで働く者の意志を経営に反映させることが必要です。そのために経営の状況を把握し、意見反映の場として労使委員会を設置し、労使の意思疎通に努めるとともに、経営意志決定への発言力、提言力を強めていきます。
    3. 私たちは、この「労働協議会(労使協議決定事項)」「労使委員会(労使協議事項)」を明確に区分して、さらなる労使協議の充実に努めます。
  2. 本部・支部における労使協議
    1. カネボウ労働組合連合会においては、組合員の労働条件の改定に係わる事項は本部の基本任務です。その対象が全支部の組合員であっても、一支部の組合員であっても本部が会社と交渉します。また、組合員に係わる就業問題などについて、与える影響が大きなもの、複数の支部に係わるものは本部において対処します。経営に関する労使協議についても、企業グループ全体はもとより、各事業部門および関係会社についても本部において対処します。
    2. 支部の基本任務は、本部決定事項の具体化および本部への意見反映です。支部における労使協議は、労働条件諸制度の運用点検、あるいは問題点是正、支部で協議または協議決定すると定めた本部対処事項の細部、当該支部事業場に係わる事項について、事業場と協議または協議決定します。
      分会における労使協議は、支部対処事項の中で当該分会事業場に係わる事項について、事業場と協議します。
  3. 労使協議体制の充実

    労働条件などの労使交渉および経営問題などに関する労使協議の在り方について検討・整備を進めると同時に、カネボウ企業グループ全社の労使関係の基本となる「全鐘紡労使会議」の再設定を行います。労使の新たな組織環境における、その目的、機能を見直し、検討を進めます。
    労使協議体制の整備とあわせ、統一労働協約の検討を行います。協約の形式・締結の当事者・締結の内容などを検討し、統一労働協約締結に向けて検討を重ねます。

行動の目標

  1. 経営対策活動
    1. 私たちが従事する事業は多岐にわたっています。私たちは、それらの実態や労働事情の調査・研究を行い、上部団体と連携をとり産業政策の推進をはかります。
    2. 雇用の安定と労働条件の維持改善のためには、経営基盤の安定と適正利潤の確保が必要です。私たちは、カネボウ企業グループの体質強化をめざし、事前協議体制の充実をはかり経営参加を進めます。
    3. 労働組合の社会的責任において、環境問題を未然に防止するため、法的規制を満たすことはもちろん、必要な対策を会社に要請していきます。
  2. 雇用の安定
    1. 私たちが安心して働き、生活するためには雇用が安定していることが最も大切なことです。私たちは次の考え方を基本に雇用の安定に努めます。
      1. 会社は、労務構成上、男女比率あるいは年齢構成においてひずみが生じてきても、ひずみ修正のための人員整理は行わない。
      2. 会社は、企業規模、事業内容の推移に応じ余剰人員が生じた場合においても、そのための人員整理は行わない。
      3. 会社は、合理化を行っても、それに付随した人員整理は行わないことはいうまでもなく、在籍のまま本人希望を尊重した雇用の場が確保されるよう、本人の納得がいくまで最大の努力をはらう。
      4. 会社は、疾病などにより、体力の衰えた組合員に対しても、それ相応の仕事の場を与えることを第一義として取り組む。
    2. 私たちの雇用と労働条件に大きな影響を及ぼす合理化問題が発生した時は、合理化が必要に至った経緯と背景を明らかにし、経営責任を究明するとともに、経営におけるその妥当性を明確にします。
      また、やむを得ず事業場閉鎖などを伴う場合は、雇用の確保と労働条件の維持に努め、それでもなお、離職せざるを得ない人が発生した場合には、相応の労働条件の確保に最善を尽くします。
    3. 雇用の安定には、企業の経営基盤をしっかりしたものにしていくことが必要です。私たちは経営対策を通じ、経営参加を進め、企業グループの経営基盤の安定をはかり、雇用の安定に努めます。
      また一方で、上部団体や支持政党を通じて国や地方自治体に対し、景気の対策・産業の政策・雇用の政策の推進と確立に関して働きかけを行います。
  3. 労働条件の維持改善と福祉の向上
    1. 私たちは、賃金・期末一時金・退職金・労働時間などの基本的労働条件の維持改善のために取り組んでいきます。
      また、多くの業種・職種や多様化した組合員構成に対応できる労働条件諸制度の整備に努めます。

      1. 賃金については、「生活保障」と「公正な評価」の原則に基づき、社会水準の確保をめざします。
      2. 期末一時金については、季節賃金としての生活給の確保を前提に、企業および事業の業績に応じた成果配分の積み上げとなるよう取り組みます。
      3. 退職金については、安心して退職後の生活が送れるよう、社会水準の確保に取り組みます。
      4. 労働時間については、ゆとりを実感できる生活の実現をめざし、その短縮に取り組みます。
    2. 私たちは、生活の質的向上をはかるため、さまざまな福祉の充実に努めます。
      1. 企業内福祉の充実をはかるため、住宅関係総合諸制度・福利厚生関係諸制度・労災付加給付制度などの諸制度の維持改善に努めます。
      2. 労働組合運動の基本にある助け合いの精神のもとに、カネボウ労働組合連合会としての自主福祉制度の充実に努めます。また、上部団体の共済活動・ろうきん・全労済など、働く者による自主福祉活動の育成・強化に努めます。
      3. 企業内福祉や自主福祉には限界があります。私たちは、上部団体や支持政党を通じて国や地方自治体に対して、社会保障制度の充実・生活基盤の整備など公的福祉の向上を働きかけます。
  4. 労働対策活動

    私たちの働く職場において、仕事量に応じた適正人員の確保をはかり、労働強化の防止に努めます。
    また、安心して安全に働ける職場をつくるため、安全衛生諸施設や職場環境の整備、改善に努めます。

  5. 教育活動および情報宣伝・文化レクリエーション活動
    1. 労働組合の財産は一人ひとりの組合員です。私たちは、活動の理念や目的、またその活動内容を組合員全員が十分に理解できるよう、あらゆる場を通じて積極的に教育活動を展開します。
    2. 活力ある組織とするためには、組合員相互の意思疎通が必要です。私たちは、機関紙(誌)や情報誌などあらゆる方法を通じて適時、的確な情報伝達に努めます。
    3. ゆとり・豊かさを実現させるために、文化・レクリエーション活動を推進します。
  6. 政治活動と社会貢献活動
    1. 私たちの労使間で解決できる課題は、企業グループ内に限られます。社会保障や税制さらには物価の安定や教育問題などの社会制度の分野では、国や地方自治体レベルでの取り組みが必要となります。そのために連合やゼンセン同盟との連携のもとに、経済、雇用、物価、食料、資源エネルギー政策などの充実や地域環境問題への対応、行財政改革を進める運動を展開し、国や地方自治体へ政策制度要求を行っていきます。
    2. 私たちは、議会制民主主義を尊重する立場と働く者の声を政治に反映させるため、同じ考えに立つ政党や候補者を働く仲間の代表として支持し、その当選をめざして中央および地方において積極的に活動を展開します。
      また、カネボウ労働組合連合会の仲間を各級議会に送りだすよう努めます。
    3. 自由と人権が保障される開かれた公正な社会、生活者を優先する社会、友愛や連帯の精神が生かされる社会の実現のために、上部団体とともに社会貢献活動を推進します。
    4. 安心して健康に暮らしていくために、働く仲間とともに地球環境保全の活動に取り組みます。